党首選挙の比較

安倍首相が辞任した。

焦点は自民党の後任選びに移っており、政治的空白を生まないために党員による選挙を行わない方向で調整されているが、それは一般党員の人気が高い石破さんを外すため、と噂されている。もしもそれが本当なら、政党というのは一体何なのかという疑問が湧く。私のイギリス滞在中にサッチャー女史が保守党党首を辞任した際の後継者選びのプロセスをご紹介し、自民党のこれからの動きと比較してみたい。

TVや新聞のニュースの記憶によれば、1990年の保守党党首選挙で過半数を獲得できなかったことから党首を辞任したサッチャー女史の後任選びは実績のあったへゼルタイン氏を軸に動いていたが、一般庶民の間では47歳と若いジョン・メージャーに人気が集まっていた。党首選挙が行われる前に、国会議員は地元選挙区に戻り、パーティーを開いて保守党支持者の声を聞いている様子がTVで報じられた。まず驚いたのは、このパーティーなるものが日本の政治資金集めのためのパーティーとは違って、イギリス流の質素なティーパーティーだったこと。お婆さんたちが甲斐甲斐しく動き回っていた。

さらに驚いたのは、議員さんたちが地元の声を携えて戻ってきた後の選挙では、前評判を覆してジョン・メージャーが勝って後継党首そして首相になったことだった。もっとも、その後、テレビの政治風刺人形劇の『スピッティング・イメージ』で毎週のように槍玉に上がっていたのは、頭に受信機のアンテナをつけてサッチャー女史のリモコン通りに動き回る「グレーな」ジョン・メージャーの姿だったから、サッチャー女子が庶民の人気を利用しただけだったのかもしれない。(TVドラマのイギリス版『ハウスオブカード (野望の階段)』を見ると、イギリスの政治もそんなに褒められたものだはない。)

しかし、イギリス国民は、常に政治に関心を持ち、「保守党」「労働党」「自由党・民主党連合」のどれかを支持し、地元の議員とコミュニケーションをとり、そして投票に反映している、と私の目には映ったのだ。日本のように、国民の半数が「支持政党なし」と言っても一向にそれを改善しようとしない各政党の怠慢さ・傲慢さとは真逆のイギリス政党政治を見た気がした。

今回の自民党後継総裁を決める選挙が党員による投票を経ないとしても、国会議員がそれぞれの地元に戻って党員の声を聞き、それを各自の投票行動に反映すればいい。国会議員の数が多すぎるとの批判を覆すためには、国民の声を国政に反映するのが国会議員なのだということを示せばいいのだ。今回はその絶好のチャンスだと、自民党員ではないけれども、私は思っている。

追記 もしもそうならなかったら、日本の現在の政党政治を見直さないといけない。1 野田・安倍合意を実行して国会議員の定数を減らす 2 参議院の定数をアメリカ上院のように各県2名とする、か、イギリス貴族員のように選挙しないでベテラン政治家のサロンとする 3 政党交付金は、直前国政選挙の投票率に比例して減額する 4 政党交付金創設時の約束通り、企業献金を廃止する 5 小選挙区を廃止して、中選挙区に戻す といったことも実行すべきである。政治家は国民に嘘をついてはいけない。

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