アカウンタビリティの重要性 比較のために(アカンタレ助教授の初海外珍道中紀行4)
LSEとICAEWに通う日々が続いた。LSEは特定の教授の指導を受けるつもりはなく、ただ図書館を自由に使いたかった。ICAEWはこの当時会計学関連の復刻本シリーズの編集者として名前を連ねていた図書館の責任者Michael Bywater氏にいくつかの質問を用意していた。そこではじめて気づいたいくつかの事柄。
1 イギリスでは「紹介状」が大きな役割を果たす。LSEの受付に座っていた女性に同志社大学の「うちのスタッフに便宜を図ってください」レベルの書類を見せたところ、すぐに「フロム・ツー・ダイ?」と聞いてくれた。「死ぬ?え?」と自問した瞬間、「あ、ここはロンドン、ダイはデイ。聞かれたのは、つまり、フロム・ツデイ?」だと気づき、「イエス・プリーズ」と返事をして初日から自由に出入りすることができた。このLSEの入館証は大英図書館の受付でも役に立ち、その場で大英図書館の入館証も手に入れることができた。そう言えば、三和銀行の紹介状はミッドランド銀行の口座開設に役立った。キャッシュカードと小切手帳と小切手帳の所有者だということを証明するチェックカードが翌朝早く届いたことは前回書いた通り。
2 地下鉄レスタースクエア駅からLSEに向かって歩く途中にやたら「Bookmaker」を見かけた。東京の神田のようにLSEが近くにあるので出版社があるのか、と思ったけれど、どことなく違和感。のれんの奥のTVでは競馬を流しているし・・・。皇太子の第一子の名前までを賭けの対象にする悪名高き「賭け屋」だと知ったのは随分後のこと。
3 シティのパブで昼食を食べていると、ちょこちょこ動き回っている中学生くらいの子供がいる。学校のある時間帯なのにバイトでもあるまいに、と思っていたら、これがれっきとした「店員」。この道一筋のプロを目指しているのだそう。ローストビーフのシンプソンズのあの堂々としたウエイターも最初はこうだったのかと、ちょっと感激。日本ではアルバイトのする仕事に成り下がってしまっているが、サービス業こそプロが育ってほしいと何度ロンドンで思ったことか。
4 例えばフォイルズのような大きな本屋さんで店員に探している本について質問をすると、即座に棚を指差してくれる。本当に何を聞いても、ちゃんと教えてくれる。イギリスが「プロ」の国だということをあちこちで教えられた。そして、質問が午後だとすると、ほとんど例外なく「酒臭い」のだ。りんごだけでお昼を済ませる人がいる一方で、ビールだけで済ませる人もいる。ちなみに、昼からアルコールを飲むことは、酔っ払わない限り構わないと説明されたが、今でもそうなのかは不明。
5 図書館でコピーをするのは手間がかかって大変だった。連続してコピーの取れるコピーカードのような便利なものはなく、1枚コピーするたびに5ペンス硬貨を投入しなければならなかった。その理由は、コピー機の上部に書かれている「著作権を侵害していませんか?!」という警告文が如実に物語っている。何でもかんでもコピーしてはいけないのだ。でも私の留学の第一目的は「貴重な資料を持ち帰る」ことだったので、せっせとコピーに励んだ。しかし、後日談になるが、持ち帰った段ボール箱いっぱいのコピーの大半は、実は商学部の書庫に所蔵されたいた。同志社高等商業学校の伝統恐るべし!
はじめての留学の日は続く。