たとえ大学の学生証を持っていたとしても、キミは大学生ではないんだよね

前回のブログは「たとえ大学の学生証を持っていたとしても、キミは大学生ではないんだよね」という挑発的な文章で終えた。この文章を「たとえ大学の学生証を持っていないとしても、キミは大学生なんだよね」と書き換えたとしたら、この文章は正しいだろうか。正しいのである。

私は、大学生は「教わる」のではなく「自ら学ぶ」ものだと思っている。私自身そのような学生生活を送ったし、大学教員としての生活を通して学生諸君にそれを伝え、可能な限りそのように扱った。

私は「監査論」つまり「会計学領域」の教授だったが、学部学生時代に所属したゼミは「会計学」ではなく「財務管理論」つまり「経営学領域」のゼミだった。じゃあ「会計学」はどこで学んだのかと言うと、「会計学研究会」という「学術団」に分類された部活で学んだのだった。会計学研究会では、1回生から3回生までは週に3〜4回の勉強会で会計学を中心とする公認会計士試験の受験に必要な7科目を中心に勉強した。

1回生から3回生までの十人程度で構成されていたこの勉強会(グループ活動と呼んでいた)で教えてくれたのは先生ではなかった。上級生が下級生を「鍛えた」のだ。初めての夏合宿で上級生の厳しい質問に的確に答えることができない1回生たちは、勉強不足を補うために3日間徹夜で勉強することを余儀なくされた。それでも、翌日の例会ではまた厳しい質問に答えることはできなかった。

その理由は簡単。われわれ1回生は指定された専門書(ただし入門書)を予習して合宿に臨んだのに対して、上級生はその本だけでなく関連した専門書をも読んだうえでレジュメを作っていたのだ。たった1年違いでこうも違うものかと、われわれは打ちのめされた。しかし、大学の勉強というものは際限ないものだということを思い知ったのは、その後の大学生活に大いにプラスになった。

最終日前夜のコンパで足りなくなった安ウイスキーを買いに行かされた友人と二人で本栖湖畔の暗い道を走りながら「いいクラブに入ったなぁ、来年の夏合宿には先輩のレベルに達しような」と言い合ったことを今でも鮮明に覚えている。

課外活動でも大学教授になれる水準の勉強をすることが可能なのだ。逆に、ただ講義を聞くだけで大学生としての勉強ができるかというと、それは絶対に「ない」。講義と関連した専門書を読んで、自分の頭で考えて、ゼミや課外活動の場で議論して・・・はじめて大学生のレベルの勉強をしていると言えるだろう。そして、極めて重要なことは、この「大学生のレベルの勉強」は、確実に面白い(はず)。

コロナ禍を嘆いているヒマがあったら、本を読もう!そして、自分のことを「生徒」と呼ぶのは即刻やめにして、今からは「学生」と呼ぼう。