村上憲郎氏のスピーチを聞いた

昨日、村上憲郎氏のスピーチを聞いた。元 Google 米国本社副社長兼 Google Japan 代表取締役社長という経歴は知っていたものの、それが2003年4月から2008年末までの期間だとは知らなかったので、勝手に「若い人」と決め込んでいたのだが、実際に目に飛び込んできた壇上の村上憲郎氏は予想外の「老けた人」だった。(あくまでも私が描いていたイメージとのギャップ。顔艶も滑舌よくて、決して老人という言葉が当てはまったわけではない)

テーマは「IOTとAIが切り開く、第4次産業革命=DXとSociety5.0」。この日本語は理解できるのだが、手許のレジュメの最初のスライドの1行目に並んでいる「電子計算機 CPU から GPU,TPU,xPUへ」のうち「GPU,TPU,xPU」は、何だ?と最初につまづいた。しかし、その後は、電子計算機から量子計算機へ、スマートウオッチ・スマートメガネ等のウエアラブルへ、神経系統との結合の事例紹介、そして、 Neo Human Peter2.0。

この Neo Human Peter2.0 は知っているぞ、NHK「クローズアップ現代」で見た。「全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病ALSと診断され、余命2年と告げられたイギリス人のピーター・スコット-モーガンさん。選んだのは、呼吸や消化、会話など失われていく体の機能を、次々と機械に置き換え、全身をサイボーグ化することで難病を克服する道。日本のメディアとしては初めて、ピーターさんの日常にカメラで迫る。人はどこまで肉体にテクノロジーを取り込んでいくのか…。未来のAIと人類のあり方を考える。」という番組の説明は、実際に番組を見て初めてその凄さを実感するレベル。SF少年が、昔、未来の人間の姿として空想したサイボーグ人間が現実のものとして目の前に繰り広げられた。(ご覧になっていない方は上のNHK「クローズアップ現代」をクリックしてください)

さらに、5G、AI/IOT、スマートシティ、核融合炉の開発、から、ニューノーマル時代、GIGAスクール、グリーンニューディール、ポスト・コロナの公共投資まで一気に進んだ後に、「でも、やっpり、最後は『パトスの論理』」「我等いつも新鮮な旅人、遠くまで行くんだ !!!」で締めくくる際に、「京大の熊野寮をダメにしたのは私です」という一言で、私の頭脳はまた混乱した。「え、あの熊野寮?」

帰宅してからググってみたら、京大の広報誌『紅萠』に「追憶の京大逍遥 新築の熊野寮で受けた洗礼」と題する村上憲郎氏の寄稿を見つけた。私が同志社に入学したのは1969年4月、この当時の京都の学生運動の中心軸は同志社の今出川キャンパス、立命館の広小路キャンパス、京大の百万遍キャンパス、を結ぶ今出川通にあったが、熊野寮はこの軸から外れていたものの、悪名高き「過激派の巣窟」だった。妙な親近感を感じたスピーチだった。