まだ アカウンタビリティの重要性

「アカウンタビリティの重要性」シリーズ、前回書いてから1ヶ月以上経ってしまった。安倍総理が「体調不良」を理由に退陣し、後継の立場を自認していた岸田文雄氏の「こんなはずではなかったのでは・・・」という政治家としてはあまりにもナイーブな表情を尻目にうまうまと権力の座についた菅総理の予想以上の「国民に対する説明しない姿勢」に辟易して、このタイトルで文章を書く気になれなかったからである。

就任早々の10月26日に菅総理がNHKの「ニュースウォッチ9」に生出演すると知り、ちょっと驚いた。まさかiPadの原稿を読みながらインタビューに答えるんじゃなかろうね、あの有馬嘉男キャスターに対してと思いつつ、また、日本学術会議の任命拒否問題の構造は見え見えだから、うまく突っ込めば本音を引き出すことができるのではないかとある種の期待を抱きながら、インタビューを見た。ところが、有馬キャスターは何度も「国民への丁寧な説明が必要なのでは?」と聞くものの、それ以上突っ込まない。そのうちに時間切れになってしまった。

有馬キャスターですら相手が首相だとツッコミは弱腰になるのかともどかしかった。イギリスのTVのキャスターは相手が首相であろうと重要閣僚であろうと、堂々とやりあっていたのにと、日本のマスコミに対する失望感は積み上がるばかり。

とことがところが、である。dマガジンで読んだ『週刊現代』11月日号によれば、

「説明できることとできないことがある」キャスターを睨みつける菅義偉総理に、現場のスタッフは息を呑んだ。・・・終わり際、日本学術会議任命問題について何度も質問され、露骨に不愉快そうな表情を浮かべた一幕である。その翌日、報道局に1本の電話がかかってきた。『総理、怒っていますよ』『あんなに突っ込むなんて、事前の打ち合わせと違う。どうかと思います』電話の主は山田真貴子内閣広報官」

だったそうで、「局内は騒然となりました・・・内容にまで堂々と口を出すとは、安倍政権の時より強烈です」とNHK幹部職員の声を紹介している。

さらに、dマガジンで読んだ『週プレ weekly』12月7日号「古賀政経塾」で古賀茂明氏は上の『週刊現代』の記事を紹介しつつ、

「報道の内容に事実誤認などがあったならまだしも、国民への説明を求めただけのキャスターの言動を問題視し、政治権力が報道機関にクレームをつけるなんてあってはならない」と述べ、「(菅総理の)仮面の下の素顔に国民がいつ気づくのか。気づいたときはもはや手遅れということになっていなければ良いのだが」

と締めくくっているが、そうならないようにするマスコミの責任はきわめて重い。「アカウンタビリティの重要性」シリーズの1回目に資料としてくっつけた『黄昏ではなく曇天のイギリスから』の「その2」「アカウンター」をもう一度読んでいただければありがたい。