損害賠償金を国民の税金で賄うことの不条理さ

今日もプーチンで書くつもりだったが、それをひとまずおいても書いておきたいニュースがあったので、急遽計画変更してプレサンスコーポレーションの山岸忍氏の怒りについて書くことにしたい。

下の写真は西日本新聞社のHPからとったもの。

その記事は次のように述べている。

「学校法人明浄学院(大阪府熊取町)の資金21億円を横領したとして業務上横領の罪に問われ、無罪が確定した東証1部上場の不動産会社プレサンスコーポレーション(大阪市)の山岸忍前社長(59)が、大阪地検特捜部で捜査した男性検事2人が関係者2人に違法な取り調べをしたとして、証人威迫などの疑いで、29日にも最高検に告発することが25日、関係者への取材で分かった。

また逮捕や不当な取り調べで長期間拘束されて名誉が失墜し、経済的損害が出たとして、国に約7億7千万円の損害賠償を求め、29日にも大阪地裁に提訴することも関係者への取材で分かった。」
 
この事件について、私は報道当初から冤罪だと思っていた。報道されている筋書きがまともではなかったのだ。どう読んでも、そこに山岸氏の犯罪が存在しているとは思えなかった。あの村木厚子氏(厚生労働省局長、当時)の冤罪が頭をよぎった。「またか」とため息をついた。
 
実は、この事件に関するでっち上げのプロセスについて書こうとは思っていない。私が専門としてきた公認会計士監査の観点から少しコメントしておきたい、と思う。それは、損害賠償金を誰が負担するのか、という点についてである。
 
山岸氏の主張が認められた場合、これまでの冤罪事件がそうだったように、おそらく訴えられた検事は法廷に立たないばかりか、損害賠償も負担しないだろう。彼が国に対して求めた約7億7千万円の損害賠償額は税金で賄われることとなる。それでいいのか?責任者が責任を取らない構図が認められる根拠はどこにあるのか?
 
このような仕組みについて私はずっと疑問に思っていたのだが、アメリカのTVドラマに大きなヒントがあった。「Law & Order」 のあるエピソードを見ていたら、冤罪事件が疑われた場合、その事件を取り調べた警察官には「自分は正当な注意を払って捜査した」ということを立証する責任があるというのだ。もしもできなかった場合には、冤罪事件の損害賠償金は保険で補填されず、その警察官が自己負担しなければならないということがわかった。
 
私が驚いたのは「正当な注意」は公認会計士監査の専門用語ではないということと、冤罪の損害賠償金は税金で補填されるのではなく、警察官が加入する保険で補填されるということ。ここに「税金」は登場しない。企業経営者が損害賠償保険に加入しているのと同じように、警察官も職務上生じるかもしれない損害賠償額を補填する保険に加入し、万一の場合にはそれで補填することとなる(らしい)。
 
もしも正当な注意を払って捜査したにも関わらず冤罪を産んでしまった場合には加入している保険で補填されるが、正当な注意を払わなかった場合やでっち上げた場合には保険はおりず、その賠償額は自己負担しなければならない、というのだ。
 
もしも日本の制度がこのような仕組みになったら、検察は冤罪をでっちあげることをやめるだろうか。それとも、仮に日本の制度がこのような仕組みになったとしても、検察は冤罪をでっちあげることをやめないだろうか。「お上のすることに間違いはない」という思い込み(考え方)を改めない限り、(想像するのも悍ましいが)日本に「プーチン」が君臨する悪夢の現実化するリスクは低くならないだろう。
 
この件については、改めて書きたい。