きみは映画『コンテイジョン』を観たか?

たまたまCSで『コンテイジョン』という映画を観た。観た方はおられますかね?

途中から観始めたので人間関係や時間の前後など一部わからないこともあったが、コロナ禍の今、現状との比較や出口を探るのにヒントが得られるないかと思いながら、半ば期待せずに観た。ネタバレにならないように配慮しつつ、興味深いところをかいつまんで紹介しよう。

香港に出張していたマット・デイモンの妻ベスが元恋人と関係を持つためにシカゴに立ち寄る。(この辺りがいかにもアメリカ映画らしい伏線で、最後の最後までこれに振り回されることになる)2日後、ミネアポリス郊外の自宅でベスがけいれんを起こし、病院に運ばれたものの、死因が不明のまま死亡する。マット・デイモンが自宅に戻ると、息子が同じ症状で死んでいた。マット・デイモンは隔離されるが、正体不明の病気に免疫があることが判明し、解放されることとなる。私はこの辺りから観始めた。

DHS(国土安全保障省)とCDC(疾病予防管理センター)が、この病気を巡って主導権争いを始め、生物兵器によるテロではないかとか、発生源はやっぱり中国なのかとか、探っているうちに瞬く間にウイルスが広がり、シカゴやミネアポリスは封鎖され、お定まりの強奪などが発生する。CDCはウイルスがブタ由来の遺伝物質とコウモリウイルスの合成物であることを突き止め、やがてワクチンの開発が始められる。この時点で、このウイルスで、世界で12人に1人が感染し、致死率は25から30%と予測されていた。

ネットでの噂話が人々の過激な行動を引き起こしたり、真面目にウイルスと戦っている医師が恋人を封鎖前にシカゴから退避させたことが暴露されるといった映画的エピソードが挿入される一方で、有望なワクチンが発見され、明るい将来が垣間見えることとなる、しかし、この時点ですでに、全米では250万人、全世界では2600万人が死亡しているとされた。

CDCがワクチン接種の順番を誕生日による抽選とするといったエピソードは現実と異なっているし、ワクチンを鼻から接種するのはおかしいなと思いつつも、ワクチンを巡る誘拐事件やそのワクチンが偽薬だという映画的エピソードが挿入されてドキドキするうち映画は終幕を迎えることとなる。

そして、私は、映画の最後の回想シーンにハッとさせられた。中国でブルドーザーが木をなぎ倒し、コウモリの一群が飛んで逃げる途中、豚小屋で落としたバナナのかけらをブタが食べてウィルスの宿主となる。そのブタが香港で屠殺され、それを調理したコックからマット・デイモンの妻に感染したことがフラッシュバック的に明らかにされた。ええっ、そこまで描いていいの?と思いつつ、この映画の制作年を見て私は心底驚いた。なんと、今年や去年の政策ではなく、2011年の制作だったのだ。

何よりも、この映画ではただちに専用病棟を建設して病人を収容していた。日本政府の誰もこの映画をみなかったのだろうか?厚生労働省の官僚の誰もこの映画を見なかったのだろうか?私は、この1年半を無為に過ごしたことをしみじみ人災だったのだと思い、心底この国の統治機構のお粗末さに慄然とした。

 

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