安倍前総理の記者会見の怪

嫌なものを見てしまった。安倍前首相の記者会見のことである。

正確に言えば、冒頭部分だけ見て、あとは見なかったので、朝日新聞電子版のまとめによれば、安倍前首相は「本日午前中、安倍晋三後援会の政治資金収支報告書の2017年、18年、19年分の3年分の修正を行ったとの報告を秘書から受けた」と説明した上で、「桜を見る会の前夜に行われていた夕食会の開催費用の一部を後援会として支出していたにもかかわらず、それをお伝えしなかったとの事実があったことから、その修正を行った」と述べ、その上で「会計責任者である私の公設第一秘書が政治資金収支報告書不記載の事実により略式起訴され、罰金を命ぜられたとの報告を受けた」とし、「こうした会計処理については、私が知らない中で行われていたこととはいえ、道義的責任を痛感している。深く深く反省するとともに、国民の皆さまにおわび申し上げます」と陳謝したとのこと。

さらに、「政治責任は極めて重いものであると自覚をしている。反省の上に立って国民から見て、一点の曇りもないように透明性を確保していくために責任を持って徹底をしていくということだ」と述べたとのこと。よくまぁいけしゃあしゃあと言えたものだ。

このような言い訳が通ると安倍前首相が本気で思っているとしたら、日本の民主主義は酷く劣化したもののだと暗澹たる気持ちになる。百歩譲って、仮に公設第一秘書が安倍前首相に嘘をつき続けていたとしても、この問題を追及された国会での質疑応答の中で政治資金に関する不審な箇所について具体的な質問を受けていながら、それらについて自ら確認もせずに答弁を続けていた姿勢は、補填していたことを知っていたからこその具体的な表れだとしか思えない。

自分の選挙区の有権者を政治資金で「首相と桜を見る会」に招待するだけでも重大な犯罪なのに、さらにパーティで接待していたとすれば、これはもう毛蟹や下仁田ネギを選挙民に配り歩いたどころのレベルではない。接待・饗応によって総理大臣の椅子を手に入れた民主主義を破壊する大犯罪に他ならない。安倍前首相は「不起訴になったから自分に法的責任はない」と考えているのだろうが、彼にはそのように考える程度の知能しかないと見做すのが常識であろう。

もしもこのような子供騙しの悪質な言い訳がまかり通るのであれば、今後、政治家の責任は一切問うことができないだろう。場合によっては、知能レベルが安倍前首相といい勝負の民間企業経営者が、自社の企業不祥事に関連して「部下がそのようなことをしていたとは全く知らなかった」と言い訳して経営責任を取らない事例が発生したとしても、彼を責めることのできない状況が生まれることになる。日本の各階層のガバナンスをぶち壊しているのだ。

私にとってはコロナ以上に重要な問題である。