社会と監査 第2回 監査の必要な日本の出来事

手許に残っている「社会と監査」のスライド・データの中で一番古いものは2008年のものです。その1回目の講義で、どうして「社会と監査」という講義名にしたのか説明しました。スライドの一枚目のタイトルは「チェックできない政治家の不透明なお金の流れ」です。下のスライドを見て、この顔ぶれの政治家たちがどうして「政治家の不透明なお金の流れ」で一括りにされているか、すぐに思い当たる人はほとんどいないと思います。安倍晋三の顔は認識できるでしょうが、記憶に新しい「桜を見る会」での不透明なお金の流れでここに登場しているわけではありません。政治家の名前と彼の不透明なお金の流れについて、各自で調べてみましょう。ググるよりも、お父さんやお母さんに教えてもらう方が早いでしょうね。

不透明なお金の流れや職務怠慢は政治家の専売特許ではありません。下に並べたスライドは問題が露見して批判にさらされた中央省庁と地方自治体の代表格です。農林水産省、厚生労働省、社会保険庁(現在の日本年金機構)そして各地の地方自治体。これらについても、知っているかなぁ?

農林水産省は、狂牛病に関して「肉骨粉を原料にした飼料が危険」とのFAXがEUから来ていたにもかかわらず、担当者が見落としたために国内で狂牛病が発生してしまった、というのが最大の問題点でした。社会保険庁は「消えた年金問題」を皮切りに次から次と問題が露見し、ついには組織の改編が行われました。

県庁・市役所・警察の裏金が次から次へと明るみに出た時期もありました。今は報道されなくなったので、そういった裏曲は是正されたと思いたいのですが、マスコミは移り気なので、ただ報道されなくなっているだけなのかもしれません。

「職務怠慢」と「実態隠蔽」が共通キーワードですが、「説明責任のなさ」も深く関係しています。

私は1993年と1990−92年の英国留学で日本との違いを痛感しました。英国では、説明責任を有している人たち(=政治家・企業経営者など)が自分たちの責任をはっきりと認識しており、説明を受ける権利を有している人たち(=一般国民・株主など)はその権利の行使に積極的であり、その間に入って説明の中身の正しさをチェックする会計士は責任に見合う社会的地位の高さを得ていたのです。それをまとめたスライドを示します。スライドで「本日の配布飼料です」と書かれているイギリスでの日常生活で感じたことをまとめたエッセー「黄昏ではなく曇天のイギリスから」を読んでおいてください。2回目はここまでです。