ロンドンの懐かしいミュージカル
今日は久しぶりの休日だったので、定年退職後の日課になっている書斎での断捨離をしていたら(いつまでやっているんだ!というハマダくんの叱責の声が聞こえてきそう)、『屋根の上のバイオリン弾き』のプログラムが出てきた。このプログラムは、1983年の一回目のロンドン留学のおり、ヴィクトリア駅から家内と日帰り旅行(リーズ城に行ったのかバースに行ったのか、今となっては思い出せない)に出かけた帰り、夕方にヴィクトリア駅に戻ってきて、多分、向かい側の古風な劇場=アポロ・ヴィクトリア劇場で『屋根の上のバイオリン弾き』を上演しているのに気づき、窓口で当日券が買えて観たときのもの。ぷらっと入ったにもかかわらず、幸運にもアリーナ席だった。
さらに幸運だったのは、この時は知らなかったのだが、主役がトポルだったこと。一つ一つのセリフはよくわからなかったが、「サンライズ、サンセット」は知っていたし、ストーリーもざっと知っていたので、初めてのミュージカルを大いに楽しむことができた。
二回目の留学(1990−92年)の留学の折には単身赴任だったが、朱雀高校の先輩で同志社大学商学部でも先輩だったワダさんご夫妻にいくつもミュージカルに連れていただき、ミュージカルの楽しさの虜になった。特に湾岸戦争で観光客が激減した期間には、売れ残っている当日券を買ってめぼしいミュージカルをほとんど観た。その罪滅ぼしの意味もあって、2000年に家内とロンドン旅行をした際には毎晩ミュージカルの切符を手配したほどだった。
そして、京都駅ビルに新しくできた劇場で劇団❌❌のミュージカル公演があるというので観に行ったら、なんと、オーケストラピットに楽団員が着席して指揮者が聴衆の拍手のもとタクトをふりながら現れ、一瞬の静寂の後に前奏曲が始まる・・・と思っていたら、なんと、録音が鳴り響いて・・・「学芸会」が始まった時のショックの大きかったこと!調べてみたら、劇団❌❌のミュージカルは、専用劇場も含めてカラオケだとか。
『キャッツ』のようなオーケストラの居場所のないミュージカルでも、出演者は、あちこちにぶら下がっているモニターに映る指揮者のタクトを見ながら演技をしているのだ。歌い手とオーケストラのコラボをまとめるのは指揮者であって、カラオケをバックに歌を歌えばいいというものではない。劇団❌❌のカラオケ・ミュージカルは詐欺まがいの似而非ミュージカルだと腹を立てていたことを振り返り、日本にはもっと大掛かりな詐欺まがいの似而非❌❌が存在していることに気づいた私は、 TVで大写しになった今日の感染者数のボードを深くため息をつきながら見るしかなかった。