チック・コリアって凄いよね
チック・コリアが亡くなった(2月9日)というニュースを聞いた時、私は1回生の秋のある日の友人宅での麻雀卓を思い出していた。この日のメンバーの一人ハマグチくんがポツリと漏らした「チック・コリアは凄いよね」という一言が私の心にぐさっと刺さったことを、半世紀以上たった今でもはっきりと記憶しているからだ。
私はハマグチくんの言った「チックコリア」なるものを知らなかった。「チックコリアって何だ?」麻雀をうちながら、私は自分に聞いた。しかし、私の知識の中に「チックコリア」は存在していなかったので、見当がつかないまま、他の二人のメンツの反応を伺った。二人とも「そうやな」と肯定的に応じて、この「チックコリア」についての話題は終わった。私も、多分「そうやな」と言ったのではないかと思うのだが、実は、全く覚えていない。ただ、「チックコリア」を知らないという「ものすごく恥ずかしい思い」だけが、今でもこの身体と心に残っているのだ。
ここで「チック・コリア」と「チックコリア」が混在しているのは、ミスではない。この時の私は「チックコリア」が人名だとは知らなかったので「チック・コリア」ではないのだ。
で、今、どうしてこのことを書いているのかと言うと、「大学というところは大学生としての教養を身につけていることを要求される場所」だということをこの当時の大学生は知っていた、ということをこのブログの読者に知って欲しいのだ。半世紀前のこの雀卓に座っていた私にとって、他の3人が知っている「チック・コリア」を知らないことはとんでもなく恥ずかしいことだったのだ。大学生は「知りませ〜ん」とか「習っていませ〜ん」などと言い訳することはできなかったのだ。この日、私は、自分の無知さをイヤと言うほど思い知らされた。
ググることの出来ないこの当時のこと、何かを知ることは非常に手間ヒマのかかることだった。が、非常にラッキーだったのは、ハマグチくんが音楽と文学に造詣が深かったのを知っていたこと。そこから探ってみたら、出町のレコード屋で正解を見つけた。しかし、「チック・コリアは凄いよね」というハマグチくんの見解に同意したかどうかは分からない。というのは、手持ちのLPの中にチック・コリアのレコードが残っていないし、ということはこの時にチック・コリアを聞いていないし、さらに言えば私にはジャズを聞く耳がなかったから。
しかし、ハマグチくんのこの一言は後の私の学者生活にとって非常に重要な一言となった。知らないことをなくさなければならない!そして、チック・コリアが凄いという彼の評価も正しかった。ハマグチくんに座布団三枚!